広島高等裁判所 昭和51年(行ソ)1号 判決 1977年8月04日
西宮市丸橋町二-二七
再審原告
森行直
尾道市古浜町二七番一八号
再審被告
尾道税務署長田曽鋭敏
右指定代理人
堂前正紀
同
小島正義
同
岩井清
同
重岡蔦夫
右当事者間の審査決定取消請求再審事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件再審の訴を却下する。
再審費用は再審原告の負担とする。
事実
一 申立
再審原告は、「広島高等裁判所が同庁昭和四二年(行コ)第六号、同第一三号審査決定取消請求控訴事件について昭和四三年六月二七日言渡した判決を取消す。広島地方裁判所が同庁昭和三八年(行)第七号審査決定取消請求事件について昭和四二年三月八日言渡した判決を次のとおり変更する。再審被告が再審原告に対し昭和三七年三月二七日付をもってした再審原告の昭和三五年分所得税の総所得金額を一一八七万五五五一円とする更正処分(但し、昭和三八年三月一八日付広協第二一四号による広島国税局長の裁決により一部取消され、所得金額九二三万五六九五円とされた。)のうち、再審原告の確定申告額一六一万一八五一円を越える部分を取消す。本訴第一、二審及び本件再審の訴訟費用は再審被告の負担とする。」との判決を求め、再審被告は主文同旨の判決を求めた。
二 再審原告の主張
(一) 広島高等裁判所が同庁昭和四二年(行コ)第六号、同第一三号審査決定取消請求控訴、同附帯控訴事件(広島地方裁判所が同庁昭和三八年(行)第七号審査決定取消請求事件について昭和四二年三月八日言渡した判決に対する控訴、同附帯控訴事件)について昭和四三年六月二七日言渡した判決(以下原判決という。)は、最高裁判所における同庁昭和四三年(行ツ)第一〇〇号事件の上告棄却の判決言渡によって、昭和四七年一〇月一七日確定した。
(二) ところが、再審被告が昭和三七年三月二七日付をもってした再審原告の昭和三五年分所得税に関する更正処分(以下本件更正処分という。)及び広島国税局長が昭和三八年三月一八日付広協第二一四号をもってした裁決(以下本件審査決定という。)には次のとおりの違法がある。
1 本件審査決定は、設計設備指導料及び譲渡所得の事項について追加審査決定をしたが、これらは本件更正処分には全くなかった事項であり、従って審査の対象とならないにもかかわらず、本件審査決定において突如として追加されたものであって、右は不服の範囲で審査するという行政不服審査法四〇条五項の規定に反し、不服の範囲を越えて再審原告に不利益に変更された違法がある。
2 本件審査決定は、再審原告が島根殖産工業株式会社から設計設備指導料として五〇万円を所得したものとして追加審査決定をしたが、右は、再審原告が前記会社から純中性無水茫硝製造に関する特許料として受領したものであって、右特許権の取得に要した経費を控除すべきであるにもかかわらず、前記のように事実を誤認したうえ課税した違法がある。
3 本件審査決定は、譲渡所得二八万二九〇〇円の追加審査決定をしたが、右は、再審原告が高木喜夫から土地、建物を合わせて合計一二〇万円で買受けたものであるにもかかわらず、再審原告の買入れ価格を六〇万円と認定したうえ課税した違法がある。
4 本件審査決定は有価証券の取引所得七〇五万二三九四円と審査決定をした。株式取引に基づく所得計算について所得税法、同法施行規則及びこれに関する通達によると、継続して有価証券を売買したことによる所得が課税の対象になるのは、年間の取引回数が五〇回、取引株数が二〇万株を越える場合でなければならないことになっており、再審原告の場合は株式取引回数が二六回、取引株数が一九万一〇〇〇株であるに過ぎないにもかかわらず、本件審査決定において株式取引回数が六二回、取引株数が五〇万六四〇〇株と誤認して課税対象に掲げ、もって本来非課税となるべきものについて課税をした違法がある。
増資新株の取得は、継続的取引に含まれないし、かつ取引回数の算定にあたっては、売りと買いを個々に計上すべきでなく、売りと買いを合わせて一体として回数に計上すべきであるにもかかわらず、本件審査決定は、この点について誤りを犯したため、前記のように違法な課税をしたものである。
(三) 原判決(第一審判決の引用部分を含む。以下同じ。)は、本件更正処分(本件審査決定による変更を含む。)に存する前記違法について、いずれもこれを是正しなかったが、右は判断を逸脱したものというべきであって、民事訴訟法四二〇条一項九号所定の再審事由に該当する。
三 再審被告の答弁
再審原告主張の事実は争う。
理由
一 広島地方裁判所昭和三八年(行)第七号審査決定取消請求事件、広島高等裁判所昭和四二年(行コ)第六号、同第一三号同控訴及び附帯控訴事件、最高裁判所昭和四三年(行ツ)第一〇〇号同上告事件の各記録によると、再審原告主張(一)の事実が認められる。
二 ところで、広島高等裁判所昭和五〇年(行ソ)第一号審査決定取消請求再審事件の記録(ことに同事件の判決正本)によると、同再審事件は、再審原告が再審被告を相手方として、原判決(及びこれに対する同裁判所が同庁昭和四八年(行ソ)第一号審査決定取消請求再審事件について昭和四九年一二月一六日言渡し、かつ、昭和五〇年一月一二日確定した判決)の取消を求めるものであって、その再審事由は、いずれも本件のそれと全く同一であることが認められる(もっとも、本件の再審事由(二)の4のうち再審原告主張の株式取引回数及び取引株数は、いずれも従前のそれと多少異なるが、再審事由の同一性になんら影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。)。
したがって、本件の再審事由は従前のそれの単なる繰返しに過ぎず、とくに再訴を許す必要も見出し難いから、本件再審の訴はその利益を欠くものというべきである。
三 そうすると、本件再審の訴は不適法であるから却下し、再審費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 熊佐義里 裁判官 武波保男 裁判官 白石嘉孝)